2011年11月28日
さるかに合戦

不幸な猿の話しを聞いて下さい。
それは幼稚園の頃の話しなんですけどね。
いや正確には幼稚園じゃなくて「児童館」だったんですが
そんな事はどうでもよくってですね。
そこで開催された遊戯会で
かの有名な「さるかに合戦」をやりましてね。
このワタクシ、
昔から才能に恵まれていたんでしょうか。
いきなり主役の猿を演じるという大役を仰せつかった訳ですよ。
すっかりテンションがマックスに上がった僕は、
来る日も来る日も練習に励みましてね。
本番前日ではリハーサルにも関わらず、
迫真の演技で周りを涙で濡らしたんですが、
肝心の本番でのことですよ。
猿のお面をかぶって茶色い衣装に身を包んだ僕は
舞台袖で静かに劇の始まりを待っていました。
しばらくして軽快な音楽が流れ始めると、
おにぎりを持ったカニが脇から登場し、
それに合わせて先生が
ゆっくりと物語を読みすすめました。
そしていよいよ、その後の運命を決定づける
猿とカニの運命の出会いのシーンなのですが、
ワタクシとしたことが
若干緊張していたのでしょうか。
登場するタイミングをすっかり見失いましてね。
どうしていいのかわからなくなった僕は
舞台袖であわあわしてしまい、
その間ひとりぼっちにされたカニは
舞台中央でおにぎりを持って固まったまま、
そして観客の父母さん達はざわざわとし始め、
それを見て既に軽くパニクっていた僕は、
こうなったら先生と一緒に登場しようと
先生の手をつないでみるものの、
あろうことかその先生に全力で拒まれ、
しかも主役の猿が登場していないというのに
それでも何故か物語は淡々と進み続け、
周囲の冷たい視線に耐えかねて
ようやく意を決して舞台に飛び出した時には
既に物語は佳境に入っており、
カニに対してなんにも悪いことをしてない猿が
「栗・臼・蜂・牛糞」という謎の組み合わせ集団に
一方的に言いがかりを付けられ袋叩きにあうという
未だかつてない斬新な「さるかに合戦」を演じた僕は
幕が下がった後に号泣しました。
いくら被りものして頑張ったって

僕に主役は無理だったんです。



web shop piace-ピアチェ- ぜひご覧ください。