日々是好日

俺の名はあえる。

自宅警備員をやっている。

この家に雇われて早３年半。　毎日全力で働いてきた。
宅配便、セールス、見慣れぬ人物に猫や散歩中の犬など、
どんな小さな異変も見逃さない。　自分でいうのも何だが、






頼りにされる存在だ。

あっちに猫を見れば吠え、こっちに人を見れば吠える。
軽快なフットワークで縦横無尽に駆け巡り吠え倒す。
まさに俺の独壇場。一人舞台だ。

そんな俺を見て、雇い主はいつもこう言う。

「少しは、落ち着け！」

意味は分からないが、きっと褒め言葉だろう。
なぁに、ちゃんと報酬は貰っている。気にする事はない。

しかしここ数日、急に雨風が強くなり、さすがに警備は無理だろうと
雇い主の家の中で待機する事になった。
外の様子も気になるが、こんな天気では仕方ない。
ケージの中での生活で、体も鈍ってしまうが、しばらくの辛抱だ。

やはり俺には、広い大地がよく似合う。

幸い何事もなく風雨も収まり、今日は朝から晴れ間が出ていた。
今まで鈍った分、散歩で一暴れするか。

それにしても雨上がりは空気が気持ち良い。
つい早足になってしまい、怒られてしまう。
風情と言うものが分からないのか。
全く融通の利かない雇い主だ。

はやる気持ちを抑えながら大人しく歩いていると
雨が上がった途端、妙に張り切る






タニシの集団に出会った。

集団でごろごろしやがって、歩き辛い事この上ない。
別に文句を言うつもりはないが、少しはまとまりやがれ。
ばらばらに散らばったりするから、向こうの奴なんか
車に轢かれてるじゃねぇか。ちった、考えろ。

朝からどうも機嫌が悪くなる事ばかりだが、まぁそれもあと少しだ。
あの場所に来れば、リードを伸ばされ、俺は自由に走り回れる。
それまでは、せいぜい大人しく歩いているさ。

さて。

雇い主が俺を呼び止めた。　ようやく着いたのだ。
あとはじっと目をみて、合図を待つだけだ。

１秒・・・

沈黙が流れる

２秒・・・

リードの止めを外す音が聞えた。

３秒・・・

「よしっ！」

来た！　待ちに待った合図と同時に俺は思いっきり駆けだした。
フルタイム４ＷＤ。　雇い主よ、もう俺は止められない。

いや、雇い主だけではない。

もはや


誰
も
俺
を
止
め
ら
れ
ｎ




えぇーーー！？





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